僕がどんなに君を好きか、君は知らない/楠瀬誠志郎
高校2年の頃、サッカー部のマネージャーをしてた。
毎日、泥まみれのジャージの洗濯とか
思春期臭漂う部室の掃除をしてた。
調度、今頃の季節の出来事。
ワタシは、出欠席簿の日誌をつける担当で
いつものノートを開いたある日、そこに落書きを見つけた。
“部活が終わったら、茶室の裏に来てください”
ちょっとびっくり。
誰が、誰に、何の用事?
これは何の呼び出しであろうか?
ワタシの他にもう一人、下級生にモテモテの可愛い同級生もマネージャーだったので
ひょっとして彼女宛かと思ったが、
いや、これは冗談だろうと思い直して、消しゴムで消した。
でも、それはしばらく続いた。
消しては翌日また書かれ、その翌日もまた翌日も。
時間を指定して書いてあるときもあった。
そしてもう一人のマネージャーに相談するも、
『あたしは日誌担当じゃないって知ってるだろうから、やっぱり貴女宛じゃないの?』
と、にやにや。
もし、行って情けなーい思いをするのもなんだし
誰かも判らない呼び出しなんて、怖いだけ。
正しくは、誰宛かも不明。
何週間かそうこうしてるうちに、その落書きはなくなった。
それから12年程経ったころ、
小・中と一緒だった旧友より電話がきた。
『ねー。高校のとき、サッカー部のマネージャーしてたんだって?』
余りの唐突な投げ掛けに戸惑いつつも、頷いて返すと、
『その時の部員っていう男子と、今一緒に飲んでるのー』
…で?
あまり興味なく返すワタシ耳に入ったのは、意外な言葉。
『なんかね、待ってたらしーよー』
「?」
『ノートにね、待ってますって書いてて、待ってたらしーよ。詳しくわかんないんだけど』
・・・。
『今でももし独りでいるなら、電話番号、教えて欲しいんだって。どうする?』
そこでやっと、あの日誌の文字を思い出した。
悪い冗談にしか聞こえなかった。
名前を聞いて、驚いた。
まあ、教えることはしなかったけれど。
ラブレターだったか。
なんて判りづらい。そしてなんて遠回り。
今更ながら、ありがたかったが
ちゃんと相手に的確に届くように書かないと。
誰が見るかも判らない物に書いては駄目だろう。
伝達能力がなさすぎる。
だいぶ遅れて、届いた手紙。
が、このタイムラグのおかけで
しっかり印象強く届いた結果になった。
思春期な思い出。
サッカーグラウンドを見ると、ふと思い出す
あの文字。
きっと今頃は、幸せでいることだろう。
で、ワタシはどうかというと、
判り易ーく、近づくタイプ。
しかし遠回りな手紙さえ、
書けなかった。
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